マルチプレーヤー マップ理論 (Gears of War)
概要
Gears of War のマルチプレーヤー (MP) マップ製作に関して、エディタの公開次第取り組んでみたいというコミュニティーの皆さんの関心の高まりに、当社スタッフ一同も非常に感激しております。そこで、Epic 社での Gears of War マルチプレーヤー マップ設計時を振り返り、達成できたこと、できなかったことを両方含めて、私たちの成果を皆様と分かち合いたくこのドキュメントを制作しました。これは、技術的な「Unreal エディタの使い方」ガイドではなく、Gears のマルチプレーヤー マップに焦点を当てた高度な設計ガイドです。
Gears にオンライン マルチプレーヤー マップまで含めるかどうかについては、Gears マップで数え切れない失敗しただけに社内でもなかなか決心がつきませんでした。そこで、じっくりと時間をかけて、MP マップをプレイする値打ちがあるものにするための「原則」を打ち出してみたのです。コミュニティーの皆さんには、この徒労を繰り返していただく必要はまったくありません。スタッフ一同、このドキュメントがデザイナーやプレーヤーを焦りや苛立ちから救い出してくれる手掛かりとなることを願っています。
以下の「原則」をすべて遵守する必要はありません。ルールを破っていただいても構いませんし、既にルール破りも存在します。実際そのようにすることで、面白いもの、ユニークなものが生まれることがあります。だたし、基本を忘れないようにして、ただやみくもに突進して転ぶのではなく、ルールの枠を外れようとしていることを自覚の上で進めてください。私個人からデザイナーの皆様へのアドバイスとしては、以下に説明するさまざまな構成側面が及ぼす効果を理解するまでは、いかなるマップでもこれらのルールを 1 つまたは 2 つ以上無視しないことです。Gears マップの「とっおきのお楽しみ」はハウスオブカードですので、それにぶつからないようにくれぐれもご注意ください!
前置きはこれぐらいにしましょう。以下のトピックは順不同で掲載されています。
前線
Gears で最も大切なゲームプレイ要因は、視野角を狭くし、回転速度を制限している点です (バットマンのファンならお分かりになるかもしれませんが、まるで Tim Burton 監督の第一作のバットマンスーツの中にいるようなイメージです)。この設定はプレーヤーの動きを技術的に制約する一方で、Gears の緊迫感を支える主な理由でもあります。画面の敵が非常に大きくはっきりと見え、ゲームの緊張感が高まると同時に、弱点も暴露されます。
この点を考慮すると、前線、つまり両方のチームが敵と対峙する共通の方角を形成することが非常に重要になります。プレーヤーはカバーの上に部隊を配列し、集中射撃が可能な体制を整える必要があります。方位的にはっきりした構造がない態勢では、敵はあらゆる方向から攻撃することができます。カバーは一方向にしか機能しないので、これでは役に立つどころか足手まといになってしまいます。
実際、コンソールスクリーンを通して見るプレーヤーの視野角は非常に狭いことから、環境全体を見渡すことは難しく、確認に時間をかけていてはマップのペース配分が台無しになるため、見るべき場所が分かるようにする必要があります。
前線の構築では、カバーの形状と配置が重要な役割を果たします。防御地域を明確に設定し、誰が見ても用途がわかるように表面を仕上げます。壁または通行不可能な領域は、戦闘地帯として定義した領域からプレーヤーを一か所に招集するのに使います。
マップ「Excalation (エスカレーション)」ではこれが明確に示されていて、初めに両軍は巨大な線状階段の上と下に対峙します。どちらの Spawn (スポーン) ポジションからでも、プレーヤーはどの方向から脅威が迫りつつあるのか瞬時に分かります。横方向への動きや、前線に沿った側面攻撃を考える余地もありますが、通常は常にそこで対面状態になります。
側面攻撃は相手が姿を認めてから
Gears のプレイテスト セッション中、私たちが追い求めた至上の瞬間を味わったのは側面攻撃の場面です。これは偶然ではなく、努力して正当に手に入れたものであり、その効果も認められ、実にやりがいのあるものでした。先にも触れましたが、この場面ではプレーヤーに姿を見せること、無差別な不意打ちではない、「フェア」プレーであることについて特にこだわったのです。プレーヤーが最期を遂げる瞬間は、デザイナーの小細工や手落ちでそうなったのではなく、自分でそう決断したからだ、と感じさせる必要があります。自分の体験から学ぶものがあれば、あるいは、一方的な犠牲者気分ではなく、敵の巧妙なプレイに破れた結果なら、プレーヤーは死に至っても構わないと思うものです。
例えば、多数の部屋にドアを無作為に配置して、それらを密接につないだレベルを思い浮かべてみてください。これは、プレーヤーのフラストレーションが最高に溜まるシナリオに適した温床なのです。カバーで敵と一戦交えている最中に、どこからともなく誰かが戸口から背後に現れ、至近距離でショットガン攻撃を受けたとします。彼の出現に気づくチャンスはなく、当然ながら攻撃をかわすチャンスもなく、生存のチャンスはゼロに近いという致死率... これでは、無差別な自動車事故の犠牲者と同じです。自分の意思決定とほぼ無関係に発生した哀れな結末です。自分が襲撃される側でなく、ショットガンで襲撃する立場なら、この場面で忍び笑いもできますが、しかし撃った相手はこのマップで二度とプレイすることはないでしょうし、おそらく二度と Gears をプレイしないでしょう (代わりに、しばらくの間はショットガンの威力が強すぎると文句たらたらでしょう)。当社チーム全員からのお願いです。このようなアンフェアなプレイが起こらないようにしてください。
さて、次にこのアンフェアなプレイをどのようにして回避するかについてですが、今から話すことは、このドキュメントの他の箇所をすべて忘れてしまっても忘れないでください。大切なことは、観察力の鋭いプレーヤーは、側面攻撃を仕掛けてきた敵に気づくチャンスと、それに反応するチャンスを常に与えられるべきです。レベル構造の大部分に標準サイズの壁を採用する代わりに、低めの通行不可能エリアや割れ目を使用したり、少なくとも壁に隙間を多数設けて、注意力があるプレーヤーなら隣のエリアで何が起こっているか分かるチャンスを与えます。
側面攻撃に対しては、瞬時の「Roadie Run」 (roadie = コンサート会場のスタッフのように、身をかがめて疾走すること)か身をかわすこと、という動作以上の要素が含まれています。これは計算を必要とするアクションであり、理想的には、攻撃から逃れるために多少の危険を伴うものです (隣接場所が高台で、遮蔽物がほとんどなく、安全な脱出ルートがないという設定を思い浮かべてください)。
「Gridlock (グリッドロック)」は、このコンセプトが明確に具現化された例です。低めのカバーが多量に配置されていて、マップ全体に視線が行きわたり、優秀なプレーヤーなら敵の位置や側面攻撃の可能性を即座に読み取ることができます。「Mausoleum (マウソリウム)」ではこの概念から大幅に逸脱していますが、そのためマップ全体に見えない敵が散乱することになり、プレーヤーは時として背後や側面からの攻撃に対して無防備だと感じることがあります。
ファジーカバー
プレーヤーがカバーの中にいる間は、安心だと感じさせる必要があります。プレーヤーはカバーに移動する前に、それが役に立つものかどうかを一瞬で認識できなければならず、カバーはその予想に応えて機能する必要があります。銃撃線の最中にいちいち調べてなどいられません。このようなニーズを満たしていないカバーのことを、私たちは FUZZY COVER (ファジーカバー) と呼んでいます。ファジーカバーの例には、森林、チェーンリンクのフェンス、銃弾が穴から通り抜けることができる柵、側面が傾斜しているためにプレーヤーの身体の一部が隠せない短かいカバー、陰に隠れることはできても、射撃から身を守るには細すぎる柱、小さすぎて身体が入らないアルコーブ (壁のくぼみ) などがあります。カバーはプレーヤーを防御できるものでなければなりません。このニーズを満たさないカバーはサイズを縮小して、プレーヤーの頭の中にある安全地帯オプションのリストから消すことができるようにします。自作ゲームには奇抜な格子や柵が何がなんでも必要だと思う場合は、それがカバーとしてプレーヤーを安全に守れるように、工夫して背後に何かを配置すれば、ビジュアル効果を損なわずに済みます。
頑丈なカバーの形をしていても、その位置関係によっては背後から簡単に狙撃できるためにファジーカバーとなる場合もあります。例えば、敵が特定の角度からカバーに発砲する可能性がある場合、その位置に出来るだけ直角になるようにカバーを配置することで、その都度起こり得る戦闘状況に対してどのカバーが使用に適しているか一目でわかります。
「TrainStation (トレインステーション)」ではこれを上手く取り入れました。大多数のカバーは、カバー候補としてプレーヤーが的確に認識できる単純なジオメトリック構造に基づいています。「Mansion (マンション)」には、内部エリアにファジーカバーを点在させ、その結果安全ではない柱や手すりなどをプレーヤーが安全だと誤認することがよくあります。
レベルフローと「LURES (ルアー)」
Gears マップのフロー、つまり到達可能なパスエリアは、Unreal Tournament のようなゲームに見られる大きさや複雑さからは程遠いものです。しかし、この特徴のお陰で、Gears マップのフローや全般的なレイアウトに一層の重点を置くことができます。
一戦、あるいは二戦もすれば、プレーヤーがマップを「モノにできる」ようにする必要があります。Gears には多数のゲームにあるような可動度を与えていません。したがって、マップ作成者が期待するプレイ方法を理解するのに、プレーヤーがマップをしらみつぶしに調べることなど考えられません。Gears マップを上から眺めると、8 の字、または H の形のような単純な形をしていることがよくあります。フローは事前に計画し、この段階をむやみに複雑にしてはいけません。Gears では、パワーアップリスポーンの時期を狙いつつ遠回りのマップを駆け抜けるのが目的ではありません。本当の意味での Gears マップの「レイアウト (展開)」は、そのほとんどが全体的なフローから分かれた分流内で、小さな戦闘規模で発生します。
他の射撃ゲームのレベルと共通する点は、マップ周辺のアクションに動きを付けるために Lures (ルアー、視線を引き付けるもの) を使用するという概念です。マップ内に超兵器を戦略的に 2 基ないし 4 基配置すると、マップのプレイ方法に確実に影響を与えます。これを利用して、長期間にわたるマップの再プレイ性を支えることができます。さらに、カバーの主要構造、パワフルな側面攻撃位置、またはイベントをトリガするボタンのようなスクリプト オブジェクトもルアーにすることができます。
優秀な戦闘アリーナは、多角度からの動きにもよく対応できます。「Gridlock」などのマップでは銃撃戦の方向回転がよく見られます。同じ空間にありながら別の座標軸上でアクションが発生します。
最後に、作成したマップを眺めて、その垂直方向の可動性を検討てください。それぞれに高さを上下変化させる方法が選択的に制限されているので、この違いを徹底的に利用して、高い壁に頼らすにマップのフローを形付けることができます。ただし、戦闘ではZ 軸の差が及ぼす大きな問題点に留意してください。高い位置を設置すると、低めのカバーの効果が取り消されるだけでなく、視認性も拡大します。高台は戦闘上有利な立場になるため、その位置で全能プレーヤーになる状況を想定している場合以外は、何か相殺するものを組み込む必要があります。また、低めのカバーバリアを見下ろし、その下にいる敵を狙って攻撃するときは、カバーの高さと厚さを通常の規格から多少外れたサイズに調整する必要があります。
「Shallow (シャロー)」では、ルアーとフローを使って最高の効果を生み出しています。側面のブリッジにはスナイパーライフル、中央エリアには爆破武器が設置されているため、プレーヤーはさまざまなパスを移動し続けることになり、その動きを意味のあるものにしています。「Gridlock」では従来型のフローがあまり明確ではなく、どちらかといえばオープンアリーナの雰囲気ですが、ここでもルアーを重点的に使用し、オープンアリーナのアクションをより戦術行為らしきものにしています。「Rooftops (ルーフトップ)」は中央からの側面攻撃の機会がなく、完全なまとまりを欠いているのはそのためです。
カバーの構成と配置
カバーは Gears マップで最も重要な部分です。これにバリエーションを加えたり、いろいろな試行錯誤を積み重ねることも大切ですが、まずは一般的なガイドラインを以下に紹介します。
高いカバーより低いカバーの方がよいのが通論です。戦闘エリアの真ん中に壁を置いてみてください。これだど、相手と交渉できるのは壁の端部分だけです。壁面の範囲内で移動したり、縁にはいつくばることはできますが、敵とのやりとりは壁の端に限られています。その上、壁によってプレーヤーの視界が大幅に制限され、壁の向こう側で発生するすべてのアクションからプレーヤーを引き離しています。
壁を低くすれば、プレーヤーのオプションは格段に広がります。壁の向こう側の成り行きがその場でわかり、側面攻撃や敵の動きを警戒できます。壁沿いのどこからでも飛び出して撃つことができ、射撃体勢の選択の幅が広がります。しゃがんだままで、良い射程を求めて巧みに移動することができます。もちろん、壁をよじ登って越えるマントル動作も可能です。高い壁の場合は、壁に沿って移動を開始した途端に身体が離れるので、単にマップを横断しているだけですが、低い壁なら移動中でも戦いに 100 パーセント参加できます。
自作のカバーピースを必要以上に複雑なものにしてはいけません。Gears のカバーシステムでは、非常に創作的なカバーノード レイアウトも可能ですが、ここは適当に加減してください。カバーの高さを交互に変化させた城壁をを築き上げるのも斬新で悪いことはありませんが、せっかくの豪華絢爛な壁を使おうとしても、コントロール上の混乱や、変化するアニメーショの量の多さに、プレーヤーはたちまち不愉快になること、間違いありません。
カバーを適切に配置することで、「プラットフォームゲーム」タイプの動き、すなわちカバーからカバーへのカバースリップやスワットターンが滑らかになります。試しに、自作のマップで、カバーから離れている時間をできるだけ短くしてマップの中を動き回り、ジャングルで木から木に移動するようにマップ内を飛び移ることができるかどうか調べてみてください。マップを素早く横断しなければならない場面で Roadie Run タイプの疾走を何度か試してみて、問題になりそうな場所がないかどうかを調べます。
最後に、カバーを密集させるのは避けましょう。カバーが何かの目障りな邪魔物であるかのような印象を与えてはいけません。カバーは射撃戦闘を促進するために配置されるものですが、多すぎると逆効果になります。誰でも危なげなく相互に接近することができ、結果としてゲームをショットガンとチェーンソーの血祭りに変えてしまいます。カバーとカバーの間に「無人の中間地帯」がなければ、カバーの持つ意味がなくなります。カバーのないこれらのオープンエリアは、まさに起こらんとする劇的な突撃の舞台であり、プレーヤーが利害関係を計算して決断を下さなければならない場面でもあります。プレーヤーの機動力や Roadie Run の価値も上がります。
「Depot」では、カバーと動きのちょうど良いバランスを提供しています。ほとんどのカバー群団の間には無防備なエリアが長く横たわり、射撃戦闘や巧妙な側面攻撃を仕掛けやすくしています。「Mausoleum」は、カバーを密集させたマップの一例です。墓石が密集して立ち並ぶ様子はマップの雰囲気にぴったりですが、主要な戦闘エリアでは、動きがぎこちなくなったり、制約されることがよくあります。
スケール
「大きいほど良い」とは限りません。大規模な戦闘エリアが 5 か所点在するマップをデザインするとしたら、その前に、窮屈な環境の値打ちについてまず考える必要があります。ここには、マップの実際のサイズ、ゲームプレイ空間という 2 面のスケールが存在します。
まず、実際のスケールについて話しましょう。当社スタッフは、画面上で敵を大きく見せる代償として、ゲームプレイの核心部分で妥協する道 (低速の移動速度、長距離での武器の効果など) を選びました。半マイル離れた位置から高さ 4 ピクセルのちっぽけな敵を撃つことなどしたくなかったのです。皆さんが作成するマップでもこの点を考慮して、戦闘を適度な至近距離に保つようにしてください。Gears は砂漠の向こう側にいる敵を狙い撃ちするためにデザインされたものではありません。他のゲームではそれが楽しくても、Gears では、プレーヤーが好むと好まざるに関わらずまず面白いものではないでしょう。戦闘距離は、敵が突入して来た場合には脅威と感じ、同時に敵が目前に現れる前にチェーンソーモンキーの突進を止めることができる余裕を持たせた範囲に保ちます。1 つのカバーエリアから別のエリアまで、敵に加えた打撃の衝撃がはっきりと目撃できる距離が理想的です。
次はゲームプレイ空間です。プレーヤーは同じマップ内でプレイし、一人で何かしているうちにマップ外にはみ出してしまわないようにします。広すぎるゲームプレイ空間の例には、駐車場を挙げることができます。形としては、交戦中のプレーヤーは至近距離にありますが、死亡プレーヤーが観戦者となり、最後の敵を追い詰めるのを眺めているようなほとんどのゲームタイプで、射撃する敵を探して 5 階を駆け回るのはお勧めできません。主戦闘区域を 1 つ選択し、その中央エリアでの出来事との関連性がない外郭エリアがマップに存在する場合は、それを削除するのも一案です。余分なエリアはおそらく戦闘を寸断するだけで、全員を 1 つの共通体験に参加させることにはなりません。
プレーヤー同士には何らかの関わり合いを持たせ、1 つのアクションの影響を受ける範囲内に配置するようにします。3 ブロック先に巧妙に仕掛けた手榴弾を手に入れるためだけに長時間のサイドミッションを展開するようなことはやめましょう。
Gears のほとんどすべてのマップは、中央に幅が約 4000 Unreal ユニットの戦闘エリアがあります。「RavenDown (レイヴンダウン)」など一部のマップでは、非常に細かいスケールを採用してマップに独特の雰囲気を与えていますが、このような変則がプレイエリアのデザインを左右するものです。
アプローチ
スポーンエリアからマップへの最初のアプローチは、大半の戦闘エリアではそれほど大切なことではないように見えますが、これがマップ全体に及ぼす 3 つの影響があります。
最も大切な点は、敵の進入が予想される領域に対して一連の視程を設けることです。敵との間に十分な距離があるため、これは戦闘態勢に影響しませんが、「おい、3 人が上、1 人がブームショットだ!」のように敵の状況を把握するのに大変役に立ちます。敵チームが指示するプレイの展開を見ながら、そのラウンドの作戦を調整することができます。
最初のアプローチでマップの大部分の特徴を明らかにして、チームが選択可能なパス候補を提供できるようにします。通常プレーヤーはこの機会を利用して、対戦チームの姿が見えたら数発狙い撃ちを行います。距離が離れているため誰も殺すことはできませんが、ラウンドが開戦し、全員が遠隔攻撃をかいくぐり Roadie Run を始めるので、ドラマの雰囲気が盛り上がります。
アプローチは、ラウンド間に呼吸を整えるのにも役に立ちます。前のラウンドで最後に死ぬことになったプレーヤーなら、この数秒間が有難いものになるでしょう。ここで心を落ち着けて、次の戦いで何を試すのがよいか考えることができます。
私たちが作成したマップの大多数は、敵に遭遇するまで Roadie Run を続けられる非常に長いエリアで始まります。「Gridlock」や「Depot」などのマップにはかなりの遠景を含め、スポーンエリアを離れた敵が散らばる方向が見えるので、観察眼の鋭いプレーヤーはその恩恵を受けることができます。
仕掛けとトリック
ユーザーはマップの何を覚えているのでしょう? もう一度プレイしてもらうために、何をすれば他のマップに差をつけることができるのでしょうか? それには、プレーヤーが「このマップといえば XX」と特定できるような、人を引き付ける仕掛けやテーマ、トリックが必要です。
これは、例えば巨大なサルの像から伸びた手の上のマップなど、威圧的な、他をしのぐようなビジュアル要素である必要はありません。トリックがマップのゲームプレイを決定づける必要もありません。密集した地雷原を走り回るのは、誰も楽しいと思わないでしょう。レイアウトとゲームプレイはその真価に裏づけされるべきですが、仕掛けはそれに付加価値を与えてくれます。
マップ全体に広がるアーチの連なりのような、視覚的に目立つ特徴を中央に据えるのもよし、強風が吹き荒れ、突風のオーディオキューに合わせて残骸が時折転がるのもよし、または時限爆弾などのゲームプレイに関連する仕掛けをマップ中央に置いてみるのもよいでしょう。
プレーヤーの意識とマップを結びつけるものを、マップ名に加えるのもいいアイデアです。MP-Guordiosa、MP-Dianima、MP-Twjfslaek と言われても、まったくピンと来ませんね。最初に飼った犬、Dungeons and Dragons で一番好きなキャラクターの名前など、マップの作成者には思い入れがある名前でも、マップをダウンロードして頭の中に整理するプレーヤーには何の意味もなく、愛着も湧きません。マップの名前は、一大広告の場なのです。レベルを売り込み、役に立つ情報を提供し、簡単で覚えやすい名前にしてください。「さてと、Gears のさ、あの大きなマンションがあるマップをプレイしようかな。あれ名前なんだっけ?」などと誰も言わないでしょう。
「TrainStation (トレインステーション)」のマップを追加する巨大な列車は、ゲームプレイを威圧せずに独特で覚えやすい印象をマップに与えている仕掛けのすばらしい一例です。「ClockTower (クロックタワー)」は、マップ中央の塔から名前をつけたという理屈ですが、期待したほど覚えやすいものでなかったことがわかりました。今にして思えば、プレーヤーがわざわざ上を見上げてこの塔に気がつくことは、まずなかったでしょうね。
視覚的な混乱
社内で視覚的な混乱に本格的に注意し始めたきっかけは、Unreal Tournament 2003 でした。最高にディテールアップした環境を望んだところまではよかったのですが、本当に何が欲しいのか掘り下げて考えていませんでした。複雑な背景の下では、敵の姿をとらえたり、重要なゲームプレイ要素を認めることがどんなに難しいか悟るまでに時間はかかりませんでした。Gear では、バランスを見つけることから出発しましたが、それを率先するのはほとんどレベルデザイナーの判断と自制に委ねました。自作のワールドでは、つい調子に乗ってメッシュのディテールに凝り過ぎてしまうもので、その誘惑を抑えなければなりません。マップに好きなだけメッシュワークを配置してもデザイナーは負担を感じませんが、パフォーマンス面で自分が何のお咎めも受けない分だけ、プレイの適性を損なっているのです。以下に一般的なヒントを示します。
- フロアサーフェースと壁に明らかに異なるテクスチャを使用してコントラストを生み出し、プレーヤーが見渡しただけで「見取り図」を見てとれるようにします。カバーもコントラストを成すテクスチャにするのが理想的です。
- 深度フォグを使用して、レベル深度の複雑が明確になるようにします (アンリットレベルでもフォグだけでナビゲートすることができます)。
- 法線マップのシンプルな平面でも、十分に素晴らしく見えます。壁がむき出しの壁そのものでも構わない場合もあります。すべての壁をパイプ、瓦礫 (がれき)、ランダムに走るビジュアルノイズで飾り立てる必要はありません。
- マップ内でプレーヤーを誘導するにはライティングを使います。エリアのドアまたはアーチなどの明らかな出口がある場合は、部屋の向こう側まで移動し、目を細めて画面を見て、出口がどこにあるかわかるかどうか自問してください。画面全体に濁ったノイズが漂っている場合は、出口に対照的な光源を使ってプレーヤーの目に留まるようにします。逆に、出口や大切な機能でない物が視線をとらえた場合は、プレーヤーが見当違いをしないように明暗を調整します。
動きを見ながらマップを編集するときは、マップの周囲にダミーのキャラクター モデルを配置します。このキャラクターは参照スケールとして使用できるほか、これがどのようにしてエリアに「登場」し、ライトによりどのような影響を受けるかを確認する材料として使用できます。キャラクター専用ライトは、敵側から見て鮮明さをより必要とするエリアに配置します。
-ポスト処理設定では、型にはまりすぎないように注意してください。ポスト処理はシーンを 1 つにまとめて視覚的に統一するという立派なタスクですが、敵味方を区別しようとするプレーヤーにこの上ない難題を投げかける可能性も秘めています。
-繰り返しますが、ファジーカバーと見間違えるような「おまけ的」なメッシュワークを置くのはやめましょう。
最後に
さあ、ここからは皆さんが腕を振るう番です。ここに紹介した原則は、今日に至るまで当社におけるカバーベースのレベルデザインの柱となっています。皆さんのクリエイティビティを制限するためのものではありません。この原則を逸脱してこそマップに独特の雰囲気が生まれ、そのためルール破りは大いに奨励されています。ただし、実験を繰り返す中でこれらのコンセプトを念頭において、「対照」グループとして利用してください。
まもなく公開されるツールを手に入れた皆さんのお手並みを楽しみにしているのは、私だけではなく、Epic 社スタッフ全員も同じだと思います。私たちがそうであったように、皆さんもこのツールで十二分に楽しんでいただけること請け合いです。
(このドキュメントに寄稿いただいた、Mike Capps 氏、Cliff Bleszinski 氏、Jim Brown 氏、Dave Nash 氏、Dave Ewing 氏、および Dave Spalinski 氏に感謝します。また、これらの教訓を学ばせてくれたコンテンツチーム一同にも感謝の念を贈ります。)
あとがき
優秀なマップを作成するのに、必ずしも優秀なプレーヤーである必要はありません。これまで当社の LD のほどんどは、オンラインでハードコアプレーヤーと対戦して皆ズタズタにやられています。しかし制作側としては、新人プレーヤーであれベテランプレーヤーであれ、ゲームのどこが面白いと感じるかを理解する必要があります。社内でマップのレイアウトをデザインするスタッフ達は、スキルレベルに関係なくゲームを大いに楽しんでいます。マップのアートワークを担当する大半のメンバーもこの上なくゲーム好きです。
Gears マップの製作メンバーがマップをダウンロードして楽しんでもらえることを願いつつ、プレイしがいのあるマップの作成に日々励んでいることにはほぼ間違いありません。
たとえ Gears のプレイ展開が気に入らなくても、エディタであらゆる機能を活用したり、特に Kismet (キスメット) では新しいゲームアイデアのプロトタイプを作成することができます。ビジュアルに純粋に興味があるなら、エディタは最高の遊び場にもなるでしょう。コツを習得したら、数少ない豪華マップの制作に関わる仕事に簡単にありつけるかもしれませんよ。多くの UE3 ライセンシー会社が優秀なビジュアルメッシャーを喉から手が出るほど欲しがっていますから (本当ですよ)。
Important!
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